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鼻呼吸を忘れてしまうと、鼻の中の空気がよどんで乾燥し、鼻の粘膜を覆っている分泌物はかさぶた状に固まって炎症を起こし、鼻水も出なくなる。
乾燥した粘液にバイ菌が繁殖するため、肥厚性鼻炎をはじめとして、わけのわからない鼻の不調が生じるのだ。
子どもたちに多い蓄膿症もそのひとつである。
口呼吸が原因で鼻の機能が正常に働かなくなり、鼻の奥の粘膜に慢性の炎症が起きて粘膜が腫れ、そこに膿がたまったこのように、鼻を使わずに口で呼吸する習慣をつけてしまうと、ますます鼻で息ができなくなり、口呼吸の習慣がさらに強化される。
こうした悪循環を、専門用語では「ポジティブ・フィードバック」というが、この悪循環によって、鼻の奥にある肩桃腺がダメージを受けることは間違いない。
したがって、蓄膿症を治そうとすれば、口呼吸のクセを改めて鼻で呼吸するようにしなければならない。
耳鼻科で治療を受けてもなかなか蓄膿症が治らないのは、いかに鼻の通りをよくしても、依然として口呼吸をつづけるために「元の木阿弥」になってしまうからなのだ。
外からの空気も入らないため、肩桃腺の働きは弱まり、ついには活動さえやめてしまう。
力を失った一届桃腺は、口と同じようにバイ菌の温床となってしまうのである。
その結果、どうなるのか。
口呼吸をつづけた結果、免疫システムの要であるワルダイエル届桃リンパ輪はすべて機能停止の状態になり、抵抗力は著しく低下してしまう。
さらにワルダイエル届桃リンパ輪では白血球がつくられているが、その白血球の中にもバイ菌が入り込み、バイ菌入りの白血球が全身を駆け回ることになる。
そうなると、免疫系のバランスは一気に崩れ、からだのあちこちで原因不明の病気が発症するようになるのだ。
口呼吸によって免疫器官のワルダイエル一馬桃リンパ輪が壊滅的な被害を受けてしまうと、人間の免疫システムはバランスを失い、正常に働かなくなる。
その結果、さまざまな免疫病が起こるのである。
しかし、わたしの目から見れば、そうした患者の病気は、奇病でも、あるいは不治や難治でもない。
そのほとんどが口呼吸ゆえに起きている免疫病なのである。
どの患者も例外なく、口であえぐように息をしている人たちばかりなのだ。
現代医学は、知識や技術が発達しすぎたために、検査データに頼る医療を行いがちだ。
コンピュータのプリントアウトばかりに気をとられて、目の前にいる肝心の患者をじっくり診る」とがない。
そして不可解なデータに困惑し、免疫病を、不治だ、奇病だと決めつけてしまうのである。
そんなデータを読む前に、患者の顔や姿をじっくり診察すれば、「この人は口で息をしているな」と気がつくはずである。
そして、口呼吸にこそ問題の本質が隠されているのではないか、と推測できるはずなのだ。
それほど検査技術が発達していない時代、多くの名医は皆、患者の姿を見ただけで病名を当てたという。
視診、触診で大方の病はわかるのである。
検査データなどなくても、患なくない。
わたしの診療室には、ほかの医師から奇病、あるいは不治、難治の免疫病と宣告され、「現代医学では治療方法がありません」といわれて困り果てて駆け込んでくるケースも少なくない。
かつて「シェーグレン症」を患った男性患者がいた。
この病は、涙や唾液が流れ、全身のリンパ節が腫れるという免疫病で、原因不明の奇病とされていた。
しかし、わたしから見れば、シェーグレン症は奇病でも何でもない、原因がはっきりした病気である。
口呼吸をつづけたために、唾液腺がダメになり、それが涙腺にもおよんだのだ。
涙や唾液が流れたのはそのためで、同時に口呼吸で扇桃腺にバイ菌が感染したため、同じ免疫器官である全身のリンパ節にもドミノ倒し的に感染し、被害がおよんだのである。
やはり患者の男性は、見るからに口呼吸をしているし、問診でもやはりそうであった。
この男性は大学のラグビー部に所属し、毎日のように猛練習をくり返していた。
ラグビーに限らず、激しいスポーツはつねに口呼吸の危険性をともなっている。
激しい動きにからだが酸素不足になるため、ついつい口で酸素を大量に取り込もうとするからである。
スポーツは、からだにいい、健康になるとのイメージがあるが、これも程度の問題で、激しすぎるスポーツ、運動はかえってからだを傷めるためマイナスになる。
いくら頑健なからだであっても、毎日のように猛練習で口呼吸をし、前日の疲労が回復しないうちにまた猛練習のくり返しでは、免疫系がダメージを受けてしまう。
IやDの活躍で日本でのファンも急増しているアメリカのメジャーリーグの中継を見て感心するのは、鼻に特製の「絆創膏」を貼って練習をしていたり、プレーする選手がいることだ。
この絆創膏にはプラスチックの薄い板が仕込まれていて、小鼻に貼ると、プラスチックが元にもどろうとする力で強制的に鼻孔が拡張されるようになっている。
鼻の通りをよくし、口呼吸に頼らないための工夫なのだ。
これは、アメリカでは、野球に限らず、アメリカンフットボールやバスケットボールをはじめ、スポーツ選手ならごく一般に利用している。
少なくとも、世界のトップクラスの選手であれば、鼻呼吸の重要性はよく知っているのである。
残念ながら、日本のスポーツ界では、鼻呼吸や免疫系についての科学的知識がほとんど導入されていないようで、前出の男性患者のようにスポーツで免疫病を発症させてしまうのである。
どんなに立派な筋肉をつけ、身体能力を向上させても、それで免疫病が防げるわけではない。
口呼吸を放置して激しいトレーニングを積んでも、からだを鍛えれば鍛えるほど発症の危険度は増してしまう。
幸いにも、この男性患者は、リンパ腺が腫れるほどまでには症状が進んでいなかったため、その治療は比較的ラクであった。
鼻呼吸を日頃から心がけ、ダメージを受けた免疫系を回復させるために、睡眠時間をたっぷりとり、骨休めすることで、無事に治癒することができた。
この患者の場合、患者が協力的で、若く、意志も強かったこともあってスムーズにいったが、ふつうはそううまくいくとは限らない。
長年クセになってしまった口呼吸を正すのは、決して容易ではない。
一時的には鼻呼吸にもどったとしても、症状が軽くなり、油断をすると、すぐにまた口呼吸にもどってしまう。
いったん口呼吸が身についてしまうと、鼻呼吸にもどすのはむずかしいのである。
タバコにもいえるが、喫煙習慣が長いほど、からだに悪いとわかっていても禁煙できない人が多い。
それと同じように、鼻呼吸への移行も、口呼吸の習癖期間が長ければ長いほどむずかしくなる。
5歳の少女の場合もそうであった。
2歳のときからぜんそくの発作がはじまったため、定期的に通院すると同時に、3歳からは水泳教室に通いはじめた。
水泳がぜんそくにいいとすすめられたからで、しばらくは発作も治まっていた。
ところが、秋に2週連続して夜間の発作が起こり、緊急外来で連日吸入療法を受けている。
入院にまでは至らなかったが、その後、母親とともに、わたしの診察を受けにきたのしかし反面、就学年齢前の子どもなどは、再びオシャブリを活用することで容易に鼻呼吸にもどすことができる。
小児ぜんそくの治療でも、このオシャブリをくわえさせることで効果を発揮する。
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